2022年現在、「これからインフレするぞ!」なんて声をニュース等でもしばしば聞くようになりました
しかし「インフレ」とはそもそも何なのでしょうか?
今回は仮想通貨投資をする上でも長期的な投資をする人にとっては、知っておいて必ず損はない基本情報として解説していきます
- インフレの基本的な知識
- 消費者物価指数:CPIの意味
- 日本とアメリカの現状と今後
「よく分からないけど、何となくインフレが怖いから投資をしたい」という方にも是非読んで頂きたいです。
インフレの基本的情報

インフレに関して直感的に理解できるように以下の早見表としてまとめました
インフレについて関係用語の早見表
略称 | インフレ |
正式名称 | インフレーション |
意味 | 日用品やサービスの値段が上がる事。相対的にお金の価値は下がっているとも言える。 |
ディマンド・プル・インフレ | 景気が良く、需要が高まり、モノの値段が上がる現象 |
コスト・プッシュ・インフレ | 人件費や原料の高騰でモノづくりのコストが増大し、値段が上がる現象 |
インフレを測る代表的な指標 | 「消費者物価指数:CPI(総合指数)」が一般的に注目されがちで、いくつかの種類がある。この数値をもとにインフレ率も計算される |
消費者物価指数:CPI (総合指数) | 全国の世帯が購入する各種の財・サービスの価格の平均的な変動を測定したもの。加重平均という手法で出しており、S&Pやダウ平均などと同じ計算方法 |
消費者物価指数:CPIの確認方法 | こちらリンク先:総務省統計局の「最新結果」から確認可能 |
日本のCPI発表日 | 毎月19日がある週の金曜日 |
アメリカのCPI発表日 | 毎月15日前後 |
インフレの緩和や抑制でとられる金利政策 | 中央銀行(日銀やFRB)による短期金利の設定 |
通貨供給量 | 金融機関以外の民間が保有する通貨の総量の事で、別名マネーサプライ、マネーストック、通貨残高 |
マネタリーベース | 日本銀行が世の中に直接的に供給するお金。上記の通貨供給量とは別なので注意 |
インフレに関して抑えておきたい要点

インフレに関して重要な事として、知っておきたい内容がいくつかあります
日本人としてこの辺の事を抑えておくと、投資をする上での判断材料になると思いますので、合わせてご覧ください
インフレの程度を知るには「消費者物価指数:CPI」が一般的
モノの値段が上がり続けるインフレ
インフレの度合いは数値的な指標として「消費者物価指数:CPI(総合指数)」が目安にされるのが一般的です
※インフレ率という指標もありますが、それ自体がCPIを元に計算されています
CPIとは、全国の世帯が購入する各種の財・サービスの価格の平均的な変動を測定したもので、毎月19日のある金曜日に総務省統計局が公表しています
昨今はインフレ懸念も叫ばれる兼ね合いから、とても注目される指標の一つにもなっています
特にアメリカが毎月15日前後に米労働統計局(BLS)の発表内容には現在かなり注目が集まります
実際にインフレインフレ…といっても、どれくらいの状況なのか数字的に把握する為に今後毎月の発表は確認していくのは大事かもしれません
数値的な変化を自分の目で見ていく事で、状況の把握には大事だと言えます
消費者物価指数:CPIには「コア指数」「コアコア指数」と細分化されたものがある
消費者物価指数:CPI(総合指数)には知っておきたい更に二つの種類があります
CPIはあらゆる値段等を網羅した総合した指数であり、価格変動の激しいモノも含まれているので、実質的なインフレを測るには誤差があります
その為に、価格変動の激しいものを差っ引いた指標が存在しています
一つが「コアCPI」、もう一つが「コアコアCPI」です
コアCPI(生鮮食品を除く総合)
コアCPIとは、CPI(総合指数)から「生鮮食品の指数」を引いた値です
こちらは生鮮食品等は時期によって価格変動がある為に、その影響を総合から引いた値としてコアCPIは見ることができます
生鮮食品とは、米類、生鮮食品、鶏卵、菓子類など、酒類以外の食料すべてです
コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)
コアコアCPIとは、CPI(総合指数)から「生鮮食品」と「エネルギー」の指数を引いた値です
コアCPIでは生鮮食品の変動が考慮されて差っ引かれていましたが、コアコアCPIではエネルギー価格の変動も考慮されて引かれています
これはエネルギー価格は国外の要因等で価格に変動が生じる為に、その影響もコアCPIから引いた値として見ることができます
生鮮食品やエネルギー等の価格変動の影響が関与しないのがコアコアCPIなので、この数値が実質的なインフレ指数と見る人もいます
これらCPI関係の指数は、投資に関係なくとも我々国民のお財布事情に影響する指標です
CPI、コアCPI、コアコアCPIを総合的に確認して、現在のインフレ状況を客観的に判断する事は何かと役に立つかもしれません
中央銀行の「短期金利」政策はインフレの程度をかじ取りする手法の一つ
インフレはものの値段が上がる事です
しかしそれが際限なく止まらなくなったりしたら国民は生活に困ります
その為に各国の中央銀行、日本だと日本銀行、アメリカではFRBが「短期金利」政策で緩和・抑制をコントロールするのが一般的です
短期金利とは、取引期間が1年未満(数日~数ヶ月程度)の金利のことで、銀行間の貸し借りに適用される金利等を中央銀行が設定します
この短期金利が引きあがると、「市場の通貨供給量を減らして、中央銀行としてはインフレを抑制しようとしている」ことの現れです←金融引き締め
逆に短期金利が引き下がると、「お金の流通を増やして、中央銀行としてインフレを加速させたい」ことの現れです←金融緩和
こちらリンク先の日本銀行の公式サイトからDLして見ることが可能です
短期金利の数値が我々の生活に直接影響を与える事は少ないかもしれませんが、投資をする上で中央銀行の思惑を知れるので重要です
通貨供給量はマネタリーベースを通して調整が図られる
「通貨供給量(マネーストック)」とは市中で出回っている通貨量の事です
景気がいい時には供給量は増加し、不景気の時は減少します
同時に知っておきたいのはマネタリーベース
「マネタリーベース」とは日銀が世の中に直接供給するお金の量の事です
こちらリンク先で、マネタリーベースの量を確認する事ができます
日本銀行は日本銀行券(日本円札の事)の発行権を持っているので、景気判断等も加味して「マネタリーベース」を調整したりもします
日銀は2013年4月に異次元緩和政策をとって以降、その量を大きくしてきている流れがあります
2013年時点で約150兆円だったマネタリーベースは、2021年末の時点で約660兆円まで増加しました
それに伴って通貨供給量も約1155兆円(2013年)だったものが、約1531兆円(2021年)まで増加しました
通貨供給量が過度に上昇すると、通貨の信用が失われてインフレが発生すると言われています
つまり通貨供給量がどう推移していくのかを確認することで、投資をする上での判断材料の一つになると言えます
短期金利同様に、マネタリーベースがどうなっていくのかも意識したい所です
2022年2月現在、日本とアメリカの現状を知っておこう

日本とアメリカのインフレ事情について現状を理解しておきましょう
まずコロナショック時(2020年4月)と2021年12月時点でのCPIとマネタリーベースを確認しておきましょう
マネタリーベース(2020年4月) | マネタリーベース(2021年12月) | |
アメリカ | 4兆8400億ドル | 6兆4100億ドル |
日本 | 518兆円 | 657兆円 |
日米ともに、中央銀行が市中に直接供給するマネタリーベースは二年間で増加しました
これは当然コロナショックにおける経済政策が約二年続いて出てきた結果です
それも一因となり、今回のテーマである「インフレ懸念」が起こりました
相対的にお金が増えてしまったら、モノの値段が上がるインフレが過度に進むのではないかと…
ただここで重要なのが、「そろそろ引き締め政策に移っていくのではないか?」といわれている点です
それらは数か月前から相場界隈では懸念点の一つとして報じられてきており、日本や特にアメリカの経済政策の動向は注目されています
日本の経済政策の現状:インフレはおきているが…
日本は2013年からの異次元緩和政策の流れがあり、コロナショック時においてもそれが継承されてきました
日銀の黒田総裁は年間2%程度のインフレ目標を掲げており、2023年4月の任期満了の退任までは継続させるのではないかと言われています
しかし、ここで日本のインフレ状況において知っておきたい事があります
以下にコロナショック2020年4月~2021年12月のCPI、コアCPI、コアコアCPI変化率をグラフにしました

こちらを見ると分かりますが、コロナショック以降もCPIは落ち込み続けるも、2021年4月頃からは増加傾向が分かります
ほぼ横ばいとも見られますが、少なからず物価は上がっているのは読み取れます
しかし注目したいのが、2021年9月以降のコアコアCPIという生鮮食品・エネルギーを除いた指数のみはマイナスになっている点です
つまりここ数か月は確かに物価上昇は起こっているが、実質は「エネルギーの高騰を背景にしたコスト・プッシュ・インフレ」が起こっていると読み取れます
これは重要で、コスト分が上がっているだけで「経済回復を原動力としたインフレとは言い難い一面がある」とも読み取れます
この状況のまま日銀の金融政策が引き締めになっていくと、基本的に景気は更に鈍化し、いわゆる「よくないインフレ」という状態が進行していく可能性もあります
景気はよくないのに、円の価値が下がる=給料は上がらないのに物価が高くなる
実際の未来は分かりませんが、投資をする判断材料の一つとして、今後もCPIやコアコアCPIは見てく必要がありそうです
付け加えると少し将来の話ですが、2023年4月に新任する新総裁の方針にもどうなるか注目していきましょう
アメリカはインフレを抑えながら、今後も景気回復は継続させたい
アメリカの経済状況として以下の表をご覧下さい
以下にコロナショック2020年4月~2021年12月のCPI、コアCPI変化率をグラフにしました(コアコアCPIは見つからず、そちらは省いています)

こちらを見て分かる通り、2020年中はまだ緩やかながらも、2021年中盤以降はインフレが完全に進行してしるのが分かります
日本のCPIは0%前後を推移していましたが、それとは次元が違いますね
当然、中央銀行のFRBとしては対策をすべきとの声も上がったりしているわけです
ちなみにアメリカFRBは2022年2月4日、退任していたパウエルFRB議長が臨時議長として指名されました
このパウエル氏の方針には非常に注目するべきですが、最近は金融引き締めについて含みを持たせています
相場としては2022年3月には金利を引き上げて、インフレ抑制策に踏み切る可能性が報道されています
それだけインフレに対して警戒している模様ですが、かといって景気を押し下げたくはない本音もあります
そのバランスを見ながらのかじ取りを行っていくと思われますが、アメリカは日本と比べると相対的に悪いインフレが起きているとは言えません
むしろ、市中の経済も回って全体として成果が出ています(あくまで日本と比較)
この調子でうまい事進めば、金利上昇をきっかけに短期的に相場が落ち込んでも、自力で景気回復が続いていく期待している人もいるはず
インフレは現在より抑制されるでしょうが、金融商品の価値もしっかり上がっていけば、足元がしっかりしている証拠でもあり、リスクオンに繋がりそうです
今後の金利政策とCPIの動向は合わせて見定めていきたい所です
まとめ

今回はインフレについて基本情報と合わせて、現状の日米のインフレについてまとめるといかになります
- インフレの状況はCPI、コアCPI、コアコアCPIを読み取る事で全体として把握できる
- 日本はエネルギー高騰の影響によるインフレが起きていて、2023年4月の日銀新総裁の方針を気を付けたい
- アメリカは大きなインフレが起きているが、景気は当然そのままにしておきたい繊細なかじ取りが要求される。FRB総裁はパウエル議長が臨時で再任中
という事ですが、インフレが起こっているといってもその性質まで見てくると見方も変わってきたりするのではないでしょうか
モノの値段が上がっているといっても複雑な思惑が絡まって単純なものではなさそうだと…
それでも現在はコロナショックが起きて二年も経ち、当時とはまた様相が変わってきている事も理解する事が重要です
特にアメリカがどう金利政策を進めていくのかに今は誰もが注目しています
毎月15日辺りに発表されるアメリカCPIの際に、恐らく同時に反応するだろう相場に一喜一憂するだけでなく、インフレの状況を読み取る意識で見ていくのもよいのではないでしょうか
個人的には今後の発表され続けていくCPI指標を確認し、仮想通貨の長期目線の方針と照らし合わせて考えていきたいと思います。